arcanum_jp’s blog

おっさんの日記

「ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代」を読んだ

 「モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか」を読んで、ダニエル・ピンク氏の他の著書も読んでみたくて購入。実は本屋で物色中に終了の鐘が鳴ってしまい、コレだ!っと手につかんだのは秘密。レジで購入後うしろを振り向くと、漠然と読んでみたかった本が陳列されていてショボンってなったのも秘密さ。

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

エッセンス(ちょっとだけよ)

 今までのドラッカーが言う知的労働者が主に使っていた左脳の活用を前提に、これからは右脳を活用した仕事を見つけなきゃ駄目さ!って本。そのためには第2部で語る以下の6つの事柄が大事になってくる。

  • 「機能」ではなく「デザイン」
    • 今までの機能性重視から、生活の意義を見出すためのデザインが重要視される。
  • 「議論」よりは「物語」
    • 議論をするためにはそれを出力するための情報を体に溜め込む必要があるが、Google神がいる今ではそれらの情報の価値は大暴落をしている。それよりもそれら情報の一つ一つをまとめあげ、物語として感情的インパクトを相手に伝える能力が必要。
  • 「個別」よりも「全体の調和」
    • 個別な事象よりもそれらをまとめる能力、先の「議論」よりは「物語」に通じる能力が必要。それらには「境界を自分で越えられる人」「何か発明できる人」「巧みな比喩が作れる人」のような能力が大事。それらの能力は、物事の各関係の間の関連性をつかむ能力が必要であり、「システム思考」「ゲシュタルト思考」「ホリスティック思考」など色々な名で呼ばれている。
  • 「論理」ではなく「共感」
    • 物事を説明するには、論理だけ必要なわけではなく、人類共通の何か「共感」が必要。その例として、エクマン博士の実験(人類の表情は、色々な人種を超えて共通なもの)を上げている。その共感には全体を見る右脳が必要であり、コンピュータには変えられない。
  • 「まじめ」だけでなく「遊び」
    • 笑いクラブを例にとり、遊び心があると右脳が活性化されるというもの、その遊び心の最たる例がゲーム。ゲームはトレンドをつかみ、関連性を描き、全体像を理解する格好の手段。ゲームや笑い、ユーモアと言った遊び心は組織を結びつける手段ともなりえるし、コンピュータではマネすることができない。
  • 「もの」よりも「生きがい」
    • 生きがいは僕達人間を突き動かす最強のエンジンであるし、その例として、アウシュビッツをすごしたビクトール・フランクルを上げる。彼の研究は人間、生きるか死ぬかの場所でさえ生きがいを見つけることができるのを示している。でも僕達はそんな生きるか死ぬかではなく、生活のゆとりから生きがいを見つけることも可能。


 じゃ、これらの6つの事柄を押さえた仕事ってのは何かって言うと、「ハイコンセプト」「ハイタッチ」な仕事。創造的であなただけにできる、人々と共感できる仕事。訳者の大前研一氏によると、「安い労働力にとって変わられるもの」ではなくて「反復性のある」ものではなくて「コンピュータに代替できるもの」でもないもの。こういった仕事の変化はアルビン・トフラーの言う「第3の波」の次のビッグウェーブが来ていて、僕らを飲みこもうとしているってこと。始めにある「訳者解説」がこの本の本質を突いている。

感じたこと

 6つのうちの最期の項目が、「生きるか死ぬかでの生きがい」「生活にゆとりがでた時の生きがい」「これからの生きがい」として「モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか」につながっていくんではないかなぁ。正直この本と対になるような本が本書なんじゃないかな。言っていることも似通っているし。いままでの常識としての「左脳型の仕事」その仕事に対する動機付け「モチベーション2.0」を前提に、それらは大事だが、それらの仕事はアジアという安い労働力を抽象化した敵がさらっていく。これらと戦うのではなく、次のステップとして「モチベーション3.0」をドライブする「右脳的」な仕事を見つけるベシ。


 言っていることはその通りだと思いつつ、「モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか」のときと同じく得に新しいことを言っているわけではない。今までさんざ社長や上司が「変えられない何かを持て」とかいった表現とかで言っていたもの。今までの啓発本なんかもそんな感じだったと思う。それらの事柄を氏の言葉で再定義したという感じ。先の6つの項目が今までは「資格」とか履歴書の「経験」とか紙に書ける情報が大事だったけど、これからのハイコンセプトな仕事にはそれらの資格、経験の情報を物語的に統合して生かすことが重要だよって言うこと。


 氏も本書の中で、これからは物事を物語としてまとめる人が重要となってくると言っているように、それを実践した本だと思う。ハイコンセプトに必要な6つの事柄は創造的な仕事に必要なものとして分析、抽出されつつもそれ単体、単体が物語りとして面白い。また、6つの物語が分析されつつも相互依存し、ハイコンセプトを説明しているんではないかな。


 あとこの変は本とは関係ないけど、アジア人が左脳的な仕事をさらっていくという本書の書き方は、別に左脳的な仕事を今現在単価が安いアジア人やインド人がさらっていくと抽象化したことなので、そこらへんはあまり深く考えなくていいと思う。多分、アジア人=悪なんて著者も思っていないだろうし。そのステレオタイプを見ればよいと思う。僕ら凡人がやっているルーチンワーク的(左脳的)な仕事はとって変わられる日も近いよと言うことだし、アジア人、インド人でも優秀な人は多い。実際、僕が知るITベンチャーでも、ほんの少しだけかかわったTIBCOって言うミドルウエアとか作った人もインド人だったしね。西洋人とかアジア人とか関係ないし。むしろそういうハイコンセプトなアイデアって日本人には出ないんじゃないかな。

自分の仕事に当てはめると

 Sierなんて文系な僕にはカッコいい言葉のような響き(だった)んだけど、やっていることは人月単価の派遣商売が主。しかし本書になぞると(もう始まって久しいとは思うが)それらはオフショアって単価のものすごく安い国に奪われつつある。しかしオフショアもまだまだ品質から見ると十分ではない。本書でもブリッジSEの事?(本書112ページ)を言っていたがまだ彼らの働きも十分ではないってことだろう。オフショアに対する言葉として地方ではニアショアが最近言われている。


 しかしこれもオフショアの範疇外のニッチな左脳的な仕事。早晩オフショアの品質に追いつかれるだろう。パイがあればとりに行くというのは必要、本書から言えば、それをやりつつも次の創造性が必要な仕事を見つけるのが吉って事だろう。まさに本書の中で引用された「チーズはどこへ消えた」で示すように、現状が変わりつつあるときに、過去の成果を見て同じように行動するのではなく、現状を打破するために動くことが必要ってことか、Going Concernって事かな。以前100年以上続いている企業は主力の商品やサービスが変わってきていたりするって記事を見たが、これと同じで、この時代、この瞬間、左脳的な仕事から右脳的なハイコンセプトな仕事を追及しなきゃっていう時がきているのかな。


 僕ら凡人プログラマーが思いつくハイコンセプトなものって言うのはもの作りができる強みを生かし、アイデアで何かを創造するって考えがちだけど、凡人の考え休むに似たり。そうそう考えつくようなものでもないし、凡人が考え付くようなものは既に他の誰かや、巨大な資本を持ったところが実現しちまっている。じゃぁ、何も無いのかって言われると、一つだけ思いついた。僕らの身近な仕事としては、プロマネがそれに当たるのかな。WBSやEVMなどの個別の情報からその中に潜む全体的な何か、問題点を抽出して物語として整理し、それらの関係者と共感し、まとめて行く能力とか。


 個人じゃなにもできないのかと言われるとそうじゃない。ゲームが好きな若いとき出てくるゲームは似たり寄ったりでもういいやって思っていたところにテトリスが現れたように、皆が常識のようにWebアプリケーション内のJavaScriptって邪道だよねって思っていたときにA-Jaxなんて言い出した彼らとか、言い出したらキリがないが、皆が感じている境界を越える個人が出てくる。そういった新しいことを考えだす人の思考はこうだよ!って言っている本なのかな。



モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

チーズはどこへ消えた?

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