arcanum_jp’s blog

おっさんの日記

「イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む」

 例によってイービーンズの各階をウロウロさまよっているときに出会った本。僕の目は獲物を求めてさまようオオカミのようになっていたに違いない、いや、コヨーテ、いや、ハイエナ・・・表紙の絵が目にとまり、なんだ?ってなって手にとって読んでみる。ふむふむ・・・これは面白い。となり購入して読んでみた。


 女性旅行家であるイザベラ・バードの書いた「日本奥地紀行」の内容を民俗学者である宮本常一先生が抜粋し、そこから話を広げていく形態。イザベラバードの書いた文章も開国後の日本をイキイキと描写していて素敵だが、そこから宮本先生の話が多岐にわたり面白い。


 昔の日本はどんなだったかというと今では時代劇のような武士の世界とか幕末志士だの華やかな世界が思い浮かべてしまうが、そんな世界ではなく、本当の庶民の生活がどんなだったかが、イザベラバードの目を通してさらりと書かれている。たとえば馬、馬は時代劇では暴れん坊将軍がパカパカ走っているイメージがあるが、日本に馬が来たのはいつからか?僕は渡来人が持ってきたと教えられた、はたしてそうか、昔は着物を着ていた。はたしてどんな着物をどのサイクルで着ていたのだろうか。ノミ、シラミなんかは自分は見たことがないが、昔はどうだったんだろう、灌頂(かんじょう)といわれる宗教的なものや、日本人の子供に対する愛情など、今ではなくなった文化、存在するが今では変容しているもの・・・いろいろ、たくさんのことがイザベラバードの目文章を宮本先生の解説を通してよくわかるわけです。


この本を読む限り、日本はこの旅行家が来てとても幸運だったのではないかと感じた。自分が歴史などで教えられたこのころの外国はというと、どちらかというと「日本を食い物にする外国」であり、生麦事件だのといった外国との軋轢があったりと殺伐としている。でも彼女の文章はどちらかというと「公平」であり、先入観を持たない目で書かれている。

 
 彼女が(彼女の国から見て)奥地の奥地である北海道に住むアイヌを未開の民族ではないかと思いながら行ってみたらなんとすごく洗練された人たちだったと感じたが、彼女の通訳である日本人の伊藤(まことにいかがわしい通訳ってwww)から見れば、犬以下の存在として扱っていたなど、その対比が面白いと感じた。


 

各章の最後が

 「では、今日はこの辺で。」

 となっていて、すごく不思議であり、なんか面白いなと思っていたが、幕末から明治にかけて日本を訪れ、旅行した人たちの紀行、日記をもとに「講読会」という形で著者が25年にわたり続けたものを書物として改めて刊行したようだ。(幸運にも)ほとんど録音してあったのが良かったのだろう。なので各章の最後が先のような形式となっている。文章自身も口語的な文章でよく入ってくる。もともとは未來社から刊行している「旅人シリーズ」というのがあって、本書は第3弾みたい。ちょっとほかのシリーズも気になる。