arcanum_jp’s blog

おっさんの日記

「通商国家カルタゴ (興亡の世界史)」を読んだ

通商国家カルタゴ (興亡の世界史)

通商国家カルタゴ (興亡の世界史)

ツイッター巡回しているときにこの本が面白いってツイートが回ってきて、え?ほんとかよーー難しそうだな・・と思いつつアマゾンで即ポチった。どっちにしても読む本が無いからお勧めであれば読んでしまおう。通勤電車内は読書の時間。


読み始めて感じたのは、ほんと世界史ムズカシーーってこと。地中海ってどこだっけ?エジプト王国?フェニ・・フェニキアリビアってどこだっけ?もうね、読み始めは本を捨てそうになりましたよ。あの辺の地域はさっぱり分からなくてイタリアとギリシアの位置も分からなかったし、クレタ島とか映画「アバウト・ア・ボーイ」で出てきた憧れのイビザ島とかどこにあるの?状態。


本の冒頭、目次の後に地中海を中心とした地図があって、読書中何度もこのページに戻っては場所を確認し、、と言う作業を繰り返しながらになりました。おれ高校の時になに勉強していたんだろう・・・とか思うわけですよ。読んだおかげで地中海は日本海以上は詳しくなった気がする。気がするだけですが・・・


本の構成は1章から5章ぐらいまではフェニキアからカルタゴが成立するまでの過程および、カルタゴの文化などを紹介。6章以降はポエニ戦争を中心としたカルタゴ帝国の興亡、衰退。栄華盛衰と言う言葉を思い起こさせる。カルタゴ内部から書かれた資料はほぼ無いがローマなどの歴史家が書いた資料は豊富にあり、どちらかと言うとカルタゴは悪く書かれているが、それらを鵜呑みにしたものではなくカルタゴの内情を書いている。


もうね、カルタゴとなる土地を分けてもらう牛1頭分の皮で囲まれる土地とかハンニバルを中心としたハンニバルにはじまりカルタゴハンニバルで心中したみたいな、カルタゴが滅亡する際の最後の将軍であるハスドゥルバルの妻が投降した将軍ハスドゥルバルに向かって叫んだ言葉、そして自分の子供を殺して自害と言うくだりはホント俺は小説を読んでいるのか?とか思ってしまう。事実は小説より奇なり。


この本で気になったのは、地中海でカルタゴや前身となったフェニキア人が住むテュロスは非常に小さい。北アフリカ近辺の地図からは点に感じるぐらいだがそういう小国(植民地を混ぜると相当大きく感じるが)がなぜこの歴史上に大きく語られる存在だったのだろうかという事。


これが本書のP92にあるように、小国で商業が盛んなだけではなく、自らが技術に卓越し、染め物、織物、金属加工、象牙細工、建築、造船と中継所としての機能にモノを作り出し売る事が出来たというのが大きいのだろう。またそれらを他国に売ったり、他国を侵略するなどの国防での力を持っていた海洋民族であった。それゆえ、小国でも生き残れたのだろうと感じた。つまりは技術が重要で≒それを手に持った人材が重要だって事だろうね。それは自分が子供の頃から言われてきた日本は資源が無い国だから技術をつけないとイケナイ。とさんざ言われてきたことに似ている。


もう一つ読んでいて楽しかったのは、色々と歴史の勉強なんかで習ってきた人物が出てきて、おお!これは俺知ってるぞ(記憶はあるという意味)と読み進めたり、その人物についてネットを漁ってみたりすること。例えばP78にあるカンビュセス2世。これ、藤子・F・不二雄の短編で「カンビュセスの籤」と言う漫画で有名なので名前だけは知っている。断片的にその昔そういう王がいて・・・と言う状態だったけどそれがカルタゴがあった時と一致して、あぁあの時期なのか・・・となるわけである。こういうのが本を読んで面白いと思う瞬間の一つだよね。

紀元前500年頃、ペルシア王カンビュセスは5万の軍勢でエチオピア[1]遠征を企てたが、やがて食糧が尽き、乗馬も草木も食べ尽くした兵士達が生きるために選んだ手段は、10人が1組となって籤(くじ)を引き、当たった1人を糧食とする残酷なものだった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%93%E3%83%A5%E3%82%BB%E3%82%B9%E3%81%AE%E7%B1%A4

もう一つは何だろう、P357のシュラクサイ(シラクサ)のヒエロニュモスだろう。ヒエロニュモス、名前からなんだか思い出しそうで思い出せず電車の中でモニュモニュしていたのだが、あれだ!ヒストリエの主人公エウメネスが幼い頃に兄弟として設定さえていた人物。調べていくと史実上でもエウメネスとは元々親友もしくは縁戚であったと言われるが、詳細は不明である。とあり、史実上も二人がもともと強い関係にあった事がわかる。紀元前215年付近の事といい、ヒエロニュモスの生きていた時代を考えれば一致する。ほう!エウメネスはこの時代に生きていたんだなと。


本ではそのヒエロニュモスついでに話が進んで行くが、先のシュラクサイがローマに攻め込まれ、2年間以上の籠城戦になったというのだ、その際アルキメデスが力学を応用した機器でローマ軍を撃退したとあり、ローマ船の船先を垂直に吊り下げて沈没させるとあり。。。ん?これどっかで読んだぞ?なんだっけ?あ!「ヘウレーカ」だ!

ええ?あの奇天烈な装置は実際にあったんだ!

( ̄□ ̄;)!!

数学者アルキメデスがこの籠城戦において得意の力学を応用したさまざまな機器でローマ軍の攻撃を撃退したエピソードは、よく知られている。巨大な投石器や石弓から正確な射程距離を測って撃ち込まれる石や矢、ローマ側の攻城機を無力にする何トンもある石や鉛の落下装置、そしてローマ船の船先を垂直にまで吊り上げて沈没さる大クレーン。もしただ一か所立つ場所を与えてくれたら地球を動かして見せると豪語した老アルキメデスは、シュラクサイの人でヒエロン王の宮廷の重鎮であり、故郷の町の攻防戦に持てる知識の全てを注ぎ込んだのであった。

実際問題あの漫画で出た装置、こんなのありゃしねぇよ!フフフなんて読んでたのですが、この吊り下げる物はあったのだと、著者の想像力のたくましさに電車の中で、だ。。。誰かに言いてぇ!とドキドキしながら読んでた。

こんな風にね、色々と読んでいて今まで知った歴史上や物語の事柄がリンクしてくるわけですよ。難しいけど楽しい、面白い本でした。