arcanum_jp’s blog

おっさんの日記

「日本「半導体」敗戦」を読んだ

日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)

日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス)


 自分の業界に似すぎていて笑った。コンプライアンスとかいった面から企業は仕事のフットワークを殺してまでもセキュリティ、もろもろを強化するけど、そのセキュリティレベルをお客様は求めているのだろうか?求めているんだとしてもそのセキュリティレベルは自社には最適なのだろうか・・・その殺したフットワークのしわ寄せはどこに行くんだろうか?お客様が求めているからとそのセキュリティを実施するのはいいが、その状況は本の中にあった日産にゴーンが来る前の話とだぶった。


 上ではセキュリティの話に摩り替えたけど、本の中では日本のメーカーが作る半導体の過剰な品質が、市場が求めている品質と乖離があり、その市場が求める品質の半導体を作る台湾、韓国の企業に負けたという事実を言っている。本では70年代の顧客が求める品質がその後の日本メーカーの品質、仕事のしかたを決定してしまったみたいなことを書いていたけど、今の日本企業を見る限りはそうじゃないと思う。基本的に日本人は「前例主義」「管理好き」なんで、相手が求めないまでもああいった品質、工程数になっていったんじゃないかな。と、門外漢が思った。その工程数の根拠を調べたエピソードに関してはちょっと笑ってしまった。(本を読んでみてね)


 実際問題、僕らの業界でも製品を作るときに、何がなんでもバグの1つでも出そうもんなら、「1つバグを出したら10見つけろ!」みたいな状況に追い込む人がいるけど、それから比べたら海外の企業が作る製品なんてひどいもんだと思う。これが海外の名の知れた一流企業でもたまにこんな感じがあったりする。いわゆる「ベータ版でもいいから安く出して、シェアを取っている間にユーザーからバグ出ししてもらう」ってやつね。でもそれは払う値段に対する品質である。「品質なんてどうでもいい!まずは世界制覇だ!」って息巻いているベンチャーなら仕方がないかって思うけど、



 あとがきで西洋人と日本人の考えの違いが書いてあったけど、そうだね、日本人は「自由に絵を描け」って言われてもただ困るだけなんだけど方向性が与えられると、微細なところに注意はいくし、仕事に対する責任感が強すぎて滅私奉公みたいな感じになるのが、本書で言うところのコスト度外視の過剰品質なのかな。全体でどうなるかとかいった視点が欠けていると思う。一方西洋人は、物事のざっくりしたところを把握し、物事の流れを作るのがうまい。そしてその流れ(仕組み、フレームワーク)を一気に広めるとかね。


 本自体は分厚いけど、ペーパーバックスなんで実は分厚く見えるだけです。文章も同じ表現、同じ文章がところどころ何度も出てくるのにはちょっと嫌だったですけど、論文調で書いてくれているために分かりやすいです。あと筆者の体験が結構面白いですよ。



著者の、JBpress(日本ビジネスプレス)での連載。

1980年代半ばには「産業のコメ」とも言われ、世界市場で5割以上のシェアを誇った日本の半導体産業。だが、その後の20年で一気に凋落し、かつての隆盛は見る影もない状態だ。半導体産業が衰退した原因を踏まえて、「ガラパゴス」化しつつある日本の製造業が生き延びていくための処方箋を考える。

日本半導体・敗戦から復興へ | JBpress(日本ビジネスプレス)