arcanum_jp’s blog

おっさんの日記

「神様のカルテ」を読んだ

神様のカルテ

神様のカルテ

買うまでのいつものアレ

 ビッグコミックで連載中の「神様のカルテ」連載も4,5回目を迎えてその面白さが段々と発揮されてきた。キャラクターもさることながら、はじめ見づらかった絵も慣れるとその魅力になりつつある。2010/10/25発売のビッグコミックではハルさんが御嶽荘にやってくるところ、学士様が自殺を図るところだったが、この後の展開がもう見たくてかなわん!と、ここでまた原作を読んでみたい病が発症し、購入。購入するとき気がついたんだけど、桜井翔、宮崎あおい主演で映画化するのね、コレ。

 

感想とか

 ストーリーの流れについては、僕が漫画版で読んでいるものと大差は無い。ただ、漫画と言う、多分、連載回数への制約上、原作でのいくつかの話題がぎゅっと一緒になっていたり抜けていたりする部分がある。しかしそれだけの変更で、あまり違和感は無く流れとしては殆ど同じ。訂装は漫画から入った人からは人物画があまりにも洗練されすぎていて違和感を感じてしまうが、この透き通るような訂装のキャラクターも悪くない。ちなみに絵は、遠くに御嶽荘が見えるが、御嶽荘の面々を象徴するもの、物語で出てくるキーとなる品をその前に配置している楽しい絵だ。


 主人公のキャラクター上、文体が古風な割には、作者がかなり乗って書いたような感じの文体で、すらすら読める。キャラクターが生き生きとしている。面白い。東西主任との掛け合い、砂山次郎との掛け合い、その掛け合いに対する主人公による所感、コメント。その辺の文章は読んでいて楽しい。本当は逆だが、要所要所で漫画でのセリフと同じセリフが繰り返される安堵感がある。


 物語を通して主人公の一止(いちと)と患者、医療への真摯な姿にほろりと涙する。物語を読んで号泣するようなタイプの小説ではない。2時間ぐらいで読めて、その後にジーンとする自分がいるはずだ。人の暖かさ、特に身近な者の暖かさが欲しくなったらふと読んでみると良い。主人公とその周りを取りかこむ魅力的なキャラクター達が繰り広げる日常の中に、時折やってくる人の死、その死に主人公は一人悶々と自問する。その気持ちにさっと気遣ってくれるハルさん。なんとも健気である。


 本の帯には「この病院では奇蹟が起きる」とあったが、通常、奇蹟と言われて考えうる「九死に一生を得る」「奇病が治る」などのドラマチックな奇蹟は起きない。そういったのが奇蹟と言うのならこの本では残念ながら1度も起きていない。主人公が担当する高度医療、病気が完治するとも無縁な、死に逝く者がゆったりした時間、最期を迎えられるという意味で、これは奇蹟なんだろう。自分もこんな奇蹟のなかで死ぬのも悪くは無いと感じた。


 映画の方は2011年公開と言うことで、来年は「岳」「神様のカルテ」と2つも見たい映画ができたなぁと。