- 作者: 今井むつみ
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2016/03/19
- メディア: 新書
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知識についてのPDCAじゃ!
学び、勉強と言うと80-90年代に子供時代をすごした自分にとっては、第一に暗記だったと感じる。漢字の暗記、九九の暗記から始まり一次方程式の暗記や英語のフレーズ暗記、まずテストでいい点を取る基本は暗記だったと感じるが、著者の言う、学びとはなんだろう・・・本屋でふとタイトルに興味を持ち購入してみた
タイトルにあるとおり、探求人になるためにはどのような学習の仕方を行ったらよいかについて、一つ一つ、知識やスキーマ、エピステモロジーなどの定義をやさしく説明しながら、物事について熟達すること。そして、探求することについて述べています。
本書のなかで重要な概念はスキーマです。その人の今までの経験を含めてバックボーンとなる知識のことです。知識を吸収するときにはこのスキーマを使いながら知識を吸収していきます。生まれてから人に教わるまでもなく自分の外界の観察から自分自身で作った概念(システム)なので、間違っているかもしれません。本書では、スキーマは誤ったスキーマを作らないこと、ではなく、間違ったスキーマを絶えず修正していくシステムを作ることが大事といいます。それらがものごとの熟達への道となります。
もう一つ本書を読む際に大事な概念がエピステモロジー(知識についての認識)です。一般の人が考える知識についての認識は、知識=事実、です。得た知識を自分の中に溜め込むことにより、知識を得たということを考えます。しかしこれらは溜め込んだが自分では使えない知識、死んだ知識であり本書ではドネルドケバブ・エピステモロジーと言っています。
得た知識を生きた知識にすることが重要といいますが本書では、プロ棋士と杉本鉞子の例をだし、彼らの暗記と受験などの丸暗記は何が違うか、暗記の過程で、意味を自分で考えるプロセスがあること。(自分で主観的に)検証され、評価することが必要ってことですね。これを探求エピステモロジーと言う言葉で表しています。
最終的には探求人を育てるためには、自分の子供を探求人にするにはと言う視点で書いていますが、ここまで本書を読んで来た方には最終章のはじめのページに答えが書いてありますがこれで納得できるはずです。すなわち、
- (対象者、子供が)探求エピステモロジーを持つことと、
- 親が探求者でなければならない。
探求エピステモロジーは自分の経験など長い間で修正しながら作られるスキーマから生まれるわけだから今自分がそういう性格でなければ子供はそのようには育たないということ。アチャー!もう子供にすぐに教育しようと思ってもこれは無いわな・・・親がまずそうなければならないというのはどうしようもないよね。本書では、親が子供とともに探求者になるためのヒントを書いている。
エピステモロジーは生活のなかで修正しながらつくるため、子供と一緒に学んでいくことで近づけることができるんだろうと。人生に遅すぎることはないとよくいわれるけど、そういうこっちゃなと。子供と「一緒」に学んでいくと言うのは子供に限らず育てる部分ではごく当たり前の事何だよなあ
本書を読んで思うのは、全体を通して学ぶということは、鶏が先か卵が先かみたいな問題なんだなと感じた。知識を得るためには今まで得た経験も含めた知識(スキーマ)が使われる。そのスキーマは知識を得ることにより絶えず修正され、次の学びの糧となる。
そうやって作られたエピステモロジー(知識の認識)は知識≠事実ではなく、自分の中で主観的に評価されたもの。それらがまた知識を得るために使われ・・・とまるでこれは知識のPDCAであり、学ぶってことは知識が先なのか、学ぶことが先なのかわからなくなってくる。
この本読んでて思うのは、読みながらそうやって考えるのがほんと面白いなぁって感じた。