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おっさんの日記

「失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)」

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

本を読んでいると意外とこの本の引用が多く、気になっていたのですが古い本と言うこともあり、読むのをためらっておりましたが、先日買って読んでみました。新書のコーナーを探していたのですが一向に見つからず、店の本検索サービスで見つかった場所に行ってみるとそこは小説の棚でした。これって小説なのですか?蔦谷書店さん!(`・ω・´)キリッ 


1章は、分析のベースとなる旧日本軍の以下の6つの戦いについての詳細です。どれもどこかで一度は聞いたことがあったりする作戦名ですね。ガダルカナルなんかは小説のタイトルや漫画の題材として使われていたりしますね。たしか楳図かずお著の「おろち」で「戦闘」と言う話で使われています。当時読んだ自分は極限の中で人間がとる行動、その後の戦後に生まれた子供の自分への不信感と言うのが漠然と怖くて仕方が無かったですね。個人的には「ステージ」が子供心になんとも言えない閉塞感がありました。と言うのは置いておいて・・・

  1. ノモハン事件
  2. ミッドウェー作戦
  3. ガダルカナル作戦
  4. インパール作戦
  5. レイテ海戦
  6. 沖縄戦

読み始めて正直、、


長げぇ!=͟͟͞͞( •̀д•́)))


って思ってしまったので2章の「失敗の本質」の章から読んでみました。


2章は先の6つの戦いから見える、旧日本軍のエッセンスです。アメリカ軍との比較もあったりして、旧日本軍の考え方が良く分かります。


戦略上の失敗要因としては

  1. あいまいな戦略目的
  2. 短期決戦の戦略嗜好
  3. 主観的で「帰納的」な戦略策定(空気の支配)
  4. 狭くて新化のない戦略オプション
  5. アンバランスな戦闘技術体系


組織的な失敗要因としては

  1. 人的ネットワーク偏重の組織構造
  2. 属人的な組織の統合
  3. 学習を軽視した組織
  4. プロセスや動機を重視した評価


2章から3章を通して感じたことは、、


読むに耐えない、これを組織というのだろうか?


という感情です。何度本を読むのを諦めようかと思いました。合理的思考のアングロサクソン系に対し、感情、情緒的なアジアン(これはアジア諸国に失礼、旧日本軍)、それに物量も負けている。戦略も短期決戦、白兵銃剣主義や艦隊決戦主義、など当時でも古い考えに固執した作戦、、改善もしない、動きはバラバラ、どうやったら勝てるのでしょうか?


それは今、分析したから思うのであって当時、自分がそのときの国民だったら情報もなかったろうしそうなるのかな?とは感じるが、それにしても惨いなぁと感じざるを得ませんでした。作戦はまさに今の日本で問題視されている「空気」や仕事でよく言われた「やれば出来る」「死んでもやれ」的な精神論などの「情緒、感情」で作られ、そこには分析や議論などはない。


本、「群れは意識を持つ」で、群れが1つの生き物のように動けるのは、個々の固体が自立的に動いているのではなく、他の個体の動きに影響されて自分が動かされる、と言うのがあり、まさにこんな感じで作戦が決まっていったんだろう。


この本を読んで感じたのは、旧日本軍の組織と言うのは「蛸壺」ではないかと。それ以外の言葉が思いつかなかった。著書の中でp349、

まことに逆説的ではあるが、「日本軍は環境に適応しすぎて失敗した」、といえるのではないか。


 とあり、人的にも狭い組織の中、その組織の理論の中でしか生きられない理論を繰り返し繰り返し強化することでその場(日本軍)の環境に適応しすぎたということが出来たと。その場の環境には適応できたが世界規模で見るとその理論は適応できていないので結果は押して知るべしです。よく、日本人が自虐的にガラパゴスと言う言葉を使いますが、まさにその状況だったのでしょう。


p374

つまり、帝国陸海軍においては、戦略・戦術の原型が組織成員の共有された行動様式にまで徹底して高められていたのである。その点で、日本軍は適応しすぎて特殊化していた組織なのであった。

よく言えば書道や剣道などの「道」であり、悪く言えば思考停止による周りとの相対的な退化。内輪の中では道でよいがそれに付き合わされた当時の兵隊さんの心境はいかに。それまでの戦略の徹底的な強化と言う面では日本軍は組織の学習としては徹底していた。ただし、環境にあわせ学習する事をしなかった。誰にも決定権が無かったという組織のため、今までの戦略や空気こそがインセンティブになっていたんだろう。


では我々はこの失敗を見て教訓があるだろうかと振り返った場合、学習と改善、それと多様性こそが未来に向けて進化し続ける組織であるのかなと漠然と考えていました。それ、どこのPDCAやねん!


よく会社などで「軍隊式の組織にすれば命令系統は下達がうまくいくので最良だ」という理論をよく聞きます。しかしその旧日本軍の融通の利かない軍隊を見るに、著書でも言っていたが、統一されたところと矛盾する、異端な人材をどのように入れ、組織に緊張感を保っていくか、統一のなかに多様性という矛盾をあえて抱え込む必要があるんだなと。


でもそれは個人が今現在生きるためでも無意識に行っていることであるし、だいたい世界は矛盾に満ちている。組織となるとなんでうまくいかないんだろうねと。


あとがきが非常に悲しい。戦後、日本が追いつけ追い越せで出来たのはロールモデルがあったから、しかしそのロールモデルが無くなった今、我々がグランドデザインを考えねばなるまい。と。この本の大一版は1990年代って言う、バブリーな時期なんだよね。経済の絶頂を迎えていた日本人はその先人の失敗を学習でいていたんだろうかと思いつつ