- 作者: 朱川湊人
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/04/10
- メディア: 文庫
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ビッグコミック増刊号で読んだ「花まんま」が面白くて原作を買って読んでみたのが先日。
先日、ビッグコミック増刊号で「花まんま」が載っていて面白いなと思い、原作はどうなのかなと購入し読んでみた。これはいくつかの短編集の中のひとつで、本のタイトルにもなっている。ジャンルがホラーになっていることがあり、職場の同僚でホラー(小説)が好きって言う人に持っているかどうかと聞くとどうも持っていない模様。短編だったら立ち読みしたらって言われたけど本屋で涙ボロボロは勘弁してと購入した。さてと・・・
「花まんま」(原作)を読んだ - nigredoな日々 〜 arcanum.jpの出張所 〜
原作も話は面白かったけど、そのほかの話はどうなんだろう・・・と時間のあるときに読んだんだけど、コレがまた面白い。これ、ジャンルがホラーになっているけど、全然ホラーじゃないよ。昭和のにおいのする雰囲気に主人公たちの不思議な体験談の思い出話。どちらかと言うとSFかな、スターウォーズみたいなSFじゃなくて、藤子・F・不二雄の言うSUKOSHI FUSHIGIな話の方ね。
トカビの夜
雑多な背景にいる存在が薄いチェンホの物悲しい話。でも最後はよかったな。読んだ後なぜかチェンホを思い、泣けてきました。
妖精生物
唯一終わり方がいやだなと感じた話です。自分(主人公)も母親と似たような存在であり、時々思い出す妖精生物がその思いを掻き立てます。最後はなんとも母親らしい行動の中に絶望が見えてしまい、希望が無い感じです。
摩訶不思議
この本の中で唯一、不思議な話なんだけど漫才のような話。最後は凄くほっとします。主人公とオッチャンだけの秘密とおもいきや、妹まで別の秘密を・・・まさに漫才です。
花まんま
妹の前世を追っていき、妹を守る話。なかなかイイ話や。ウチの子供は今は妹に嫉妬して意地悪するけど、そのうちこのおにいちゃんみたいになってくれるんだろうか・・・
送りん婆
人の死をつかさどる仕事をするおばさん(送りん婆)の話。思い出をポツポツと冷静に話すよう物語が語られるのが非常に良いです。
凍蝶
主人公の生い立ち、友人の裏切り、絶望、つかの間の出会いとなり、最後は希望が見えます。非常にいいなと思う。読んでいるとミワさんが実は鉄橋人間なんではとか、無縁仏の幽霊ではとか、色々と憶測をかもし出すような文章が凄くハラハラドキドキしてしまいます。実際にはネオン街にいる凍蝶だったわけですが、大きくなってから思い出すミワさんは主人公にとってかけがえのない思い出の人であり、彼女を見たとき、「あんなことで生計を立てるオンナ」みたいな感覚を成長と共にいつまでも持たないのは素敵な感じでした。
全体的に
この本で描かれる主人公はどちらかと言うと子供のような大人であり、差別などで人を格付けしたがる大人からは無縁で自由でのんびりしています。自分も昔はそうだったのかなぁと思う。凄く素敵な主人公たちです。全体を通して昭和の話題が出てきますが、どれもソレを主題にするものではなく話のアクセント、アクセサリー程度のものです。昭和を知らない人は「それがあったんだぁ」程度に読めばいいですし、どっぷり昭和の人は、しんみりしながら読むのもいいです。