arcanum_jp’s blog

おっさんの日記

「使える行動分析学: じぶん実験のすすめ (ちくま新書)」


 島宗さん、なぜ幸せからはいる?と思えるような出だし。今回の本は「幸せ」という観点からどうすれば幸せというのを見つけるための方法を得るか、そしてその方法として「自分実験」を中心に幸せになるための方法を提示します。


 いままで読んできた行動分析学の入門書は、行動分析学の核となる「行動随伴性」と「好子」と「嫌子」の働きを説明するためにサンプルとなるストーリーなどを書いてそこから好子と嫌子の意味、そして行動随伴性について説明することが多く、一通りの基本的な原理の説明で1冊の本(文庫本)になるという構成でしたが、今回の本は「行動随伴性」「好子」「嫌子」の説明はするものの、他のいろんな原理の説明についてはバッサリと切っています。分かりやすいと思います。


 この本では好子と嫌子の説明として自己実現などでよく言われる「マズロー欲求段階説」を引き合いに出して説明します。たとえばマズローの階層図の生理的欲求の層にしても、それらは生きるのに最低限必要な欲求であるが、行動分析学から言うと、たとえば生きるのに必要な「水」にしたって水がいかなる時も必要なわけではなく、たとえば水をたっぷり飲んだ人には何の作用ももたらさない。運動したり辛い物を食べたときなどは水の好子としての機能が高まると言ったようにマズローの図からは見えてこない部分を行動分析学の観点から補足します。


 著者の本は以前、よく見ているサイトで紹介された「パフォーマンスマネジメント」を読んですごく衝撃を受けたのですが、そこからいろんな行動分析学の入門書などを読んできました。行動分析学は正直、習慣化がキーになっていると感じました。どうすれば望む行動を習慣化できるか、どうすれば望まない行動をなくすことができるか。そのためには標的となる行動について何が好子になっているかなどを見極めて介入する。そう考えれば非常にいい実践的な学問かと思います。


 さて、自分実験ってなんざんしょ。自分実験に対して似たような言葉で自己実験と言うのがありますが、自己実験は実験者自らを被験者とするやり方で、有名なのではキュリー夫人ラジウムを自分の手にあてて火傷をさせて観察をするなどの研究です。ラジウムの人体に対する効果や影響などは色々な事象からわかって一般化され、誰へもどんな影響があるかわかりますが、自己実験では被験者である実験者の結果しかわからず、一般化が難しいそうです。そのため自己実験は今では行われていないとのこと。


 むむむ?なら自分実験なるものも自分を実験材料にするので悪いものでは?いやいやいゃぃやぃや・・・先ほど一般化と言いましたが、膨大な実験から見つけられたのがセルフコントロールやセルフマネジメントと言われる分野で一般化された方法。じゃぁそれらを使うべきでは?それらは「より多くの人にとって有効な方法を探求し、開発するもの」で、そうではなく、自分に合った方法、自分だけの方法を探すやりかたとしてこの本では「自分実験」と言っているようです。


 本書のP149でも言っているようにそもそも一般化からはみ出したような自分のクセや習慣をいかに直すか、今まで自分にはなかった行動をどうすれば獲得、習慣化できるか。これはセルフコントロールなど万人にある解法ではなく自分にあった方法を模索するしかないのですね。

P149より引用:

自分実験で変えようと願う標的行動の多くは、各自が長年変えようとして、でもなかなか変えることができなかった行動です。変えられなかった理由が随伴性にある限り、随伴性を変えないと行動は変わらないのです。

 行動分析学?なんか難しい学問だなーーとか思わずに「自分実験」ならなんか面白いと思いませんか?本書は自分がほうぼうで行動分析学面白いよね!って言っているように、実践すればとてもいい結果を生むと思います。劇的に変わるのは無理にしても少しでも自分が変わりたい風になれたらいいと思いませんか?え?自分実験って言われるとショッカーとかドクター・マシリトみたいになっちまうんでは?うん、それはそれでいいかも・・・



 とりあえず日本での行動分析学の権威の入門本です。アカデミックなのが読みたければ島宗先生や杉山先生を読むといいみたいです。子育てだったら奥田先生、行動分析学をビジネスに使いたいというのであれば舞田先生の本がいいです。私は島宗さんの本もいいですが、舞田さんの文体が好きですね。

パフォーマンス・マネジメント―問題解決のための行動分析学

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メリットの法則――行動分析学・実践編 (集英社新書)

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行動分析学マネジメント-人と組織を変える方法論

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行動分析学入門―ヒトの行動の思いがけない理由 (集英社新書)

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