
- 作者: 三菱総合研究所
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2015/09/16
- メディア: 新書
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IOTってなんだろう、なんだかもやもやっとは分かるけど。。。と思い買って読んでみました。
本書によるとIOTは「モノのインターネット化」と略されたりしますが、あらゆるものがインターネットにつながることをIOTと呼んでいます。そのメリットとしては、モノにつけられたセンサーのデータを大量に蓄積し、分析することにより、利用者の「使い方」を把握し、よりよい使い方の提案などが出来るようになるという新しい価値を創造するということらしいです。実は本書でもM2Mなど機械同士のやり取りをするために既につながっていたといいます。M2Mは機械の効率化であり、IOTはつながることにより価値の創造が行われる点が大きく異なるといいます。
その例として本書冒頭では、IOTが当たり前になった30年後の未来を想像し、人々の生活にどのように恩恵があるのかを書いています。身につけているモノが主体的に状況により判断し、行動履歴などから利用者となる人間に適切なアドバイスなどをする、利用者が本質的な行動をできるようにサポートする未来です。もっと言うと、ユーザーがモノであるかなんか気にならなくなり、モノが自立的に判断した上で、全体の中で最適な制御を行うようになるということです。
ものづくりと言う面からも、今まで物を作って売っていればよかった、売った後が分からなかったメーカーも、売るものにセンサーが付くことにより、利用者のデータを集めることができる。たとえばセンサーのデータから、物の寿命が分かったりするわけで、壊れてから修理と言うサイクルが、お客様に「そろそろ壊れる頃」という提案ができ、お客様にとっても、壊れてから修理されるまでの時間を計画的に修理出来るようになり時間短縮など恩恵を受けられます。
また、価値の共創と言うのもキーワードで、完成品になるまで売るのを待つのではなく、あえて最低限の機能だけで出荷しユーザーからのフィードバックにより完成に近づけるという方法も紹介されていました。企業が行うアイデアソンやハッカソンなんかもこれに含まれますが、これ、Webサービスやソーシャルゲームの世界ではもう普通のことですね。
ものづくりを行うメーカーは、ハードのみならず、IOTで取得できるデータにより、ソフトウエア(サービス)を提供する立場に変わる、変わらないと生きていけませんよ?ということでした。
一つ気になったのは、最後の章、IOTで地域課題を解決という部分、
p202
生産者に個別に蓄積されてきたノウハウは、デジタル化で形式知化されます。新しい農業の担い手たちに、作物の育成環境と育成状況に応じたアドバイスがしやすくなり、品質のよいものを消費者に提供できるようになるでしょう。
ITに携わる自分から見ればとても良いように思えます。属人性が排除されなおかつ、未来へ向けての共有化ができるのですから。でもこれを思ったとき、じゃぁ新しい担い手も恩恵を受けるけど、形式知のプラットフォーマーが一番恩恵を受けるのではないかなと感じました。つまり中央でデータを集約し、サービス改善に利用するプラットフォーマーです。そうなると、実は地方で仕事をしていた人の技術が骨抜きにされ、単に人はプラットフォーマーの駒になるだけなのかなと。
本書の最後に述べているとおり、
情報が蓄積されている場所に価値があるのではなく、情報が発生する現場に近いところで、それをどう活用するかが求められているのです。
情報の出し手になるだけではなく、その利用方法についても個々人が考えていかなくてはならないんだろうなと思いました。