- 作者: 金子哲雄
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/05
- メディア: 単行本
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内容とか感想とか
激安ジーンズの仕組みから入り、流通業がどうやって激安を実現しているか調査した内容を書く。それは流通業が一貫して製造から販売を行う垂直統合であったり、まず売る価格ありきでその範囲内で利益が取れるように調整する消費者希望価格方式(需給分析方式)であったりします。
垂直統合があれば、その逆の垂直分裂もあります。工程や機能ごとに複数の企業によって担当される場合です。この垂直分裂は、部品の標準化のたまものなのですが、その反面、企業にとっては独自性を出しづらくなり利益を出す方法として高付加価値化を揚げ、デザイン、BTO方式(注文を受けてから作る)、サービス貿易と発展します。
その上で、日本の品質ありきの立ち居地が世界のなかではどう写るか、どのようにしなくてはいけないかなどが書かれます。実際には発展途上国において安いものを求めるエントリーユーザーの市場、これを制覇しつつ、そのなかから国が成熟するにつれ、高品質志向製品を出していくという「あれもこれも」の世界です。
途中にあるコラムも秀逸ですp28〜29にある「大手チェーンを凌駕する「パパママ・ストア」」は僕にとっては転地がひっくり返るような驚きでした。街中にあるどう見てもその価格で経営が成り立っているのか?って感じるようなパパママストア。その成り立つからくり、スーパーの経営システムからはみ出した部分を頂戴する仕組みを紹介します。
感想とか
先日、ドラッカーでの勉強会や、以前読んだ本でも言っていたように、消費者が求める品質を供給者が勝手に考える考えるのではなく、消費者が考えるということでしょう。いくら品質、品質と言っても、消費者が求めていなければ(市場が成熟していなければ)単に安いほうが勝者ですし、それが市場価格になります。
本書のH&MやFOREVER21の例にあるように、いくら品質が良くて5年とか長く着る事ができる服を投入したとしても、その買う人達は1年着れればいいやと考えているのであれば、あとの4年の品質にかけるコストは単なる無駄になります。だったらその4年分を安くできるんじゃないかと。
そこで「最期は品質だよ」と言うのは、供給側の傲慢ってもんでしょう。消費者が求めているものが何か考え(マーケティング)市場の成熟にあわせ品質なりを投入していくというのが大事なんでしょう。激安って今まで悪いイメージを持っていたけど、最近の読んだ本と、あわせて、非常にいい勉強になったなと。