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おっさんの日記

「マシュマロ・テスト:成功する子・しない子」を読んだ、我思う、故に我変われり

マシュマロ・テスト:成功する子・しない子

マシュマロ・テスト:成功する子・しない子

 マシュマロ・テスト、その名前は知っていて、確か「選択の科学」だったかな?で知った。当時自分の娘は5歳ぐらいでたまに自分が車で保育園へお迎えに行く。ちょっとした袋に入ったクッキーを持って。今思うとオレ悪い親だなぁと・・・


 与えてすぐ食べるのじゃなくて、家まで我慢して食べられるかな?家まで我慢したらもう一枚あげるねって約束した。子供には辛い選択だ。そこから家までの10分間はルームミラー越しに見る彼女は辛そうに見えた。我慢したりその袋を手でいじってみたり、袋のままベローンっとなめてみたりと。そして家まで我慢できた。家に着いたときクッキーはもう粉だったけど・・・


 マシュマロ・テストは著者が1960年代に行った、子供の前にマシュマロ(その子が気に入るもの)を置き、今ひとつもらうか、我慢して後で2つもらうかと言うのを観察したテストで、その後の被験者の様子を娘を通して聞くと自制心とその後のステータスに相関が見いだせたので70年代に550人ほどの子供で追跡調査を行った。と言うのが始まり。自分と同じ年代の人が被験者。すでに50年もの歴史があるのですね。


 本書では、そのテストで見せた自制心をホットシステムとクールシステムと言う言葉で説明。ホットシステムは人類が古来から本能的に生きることができるよう、敵が襲ってきただのおいしそうな果実を見つけただの、メス見つけた///だのに即座に反応して行動させちゃう古い脳。扁桃体。対するクールシステムはそれらのホットシステムを抑えてまぁ我慢しな!って発現しないようにする新しい脳。前頭全皮質。自制を制御する。


 マシュマロ・テストを受けた被験者のその後を追跡調査するとなんと、テストで待つ時間が長い子ほど、その後の学歴、年収、社会的地位などが高い傾向にあり、テストの時間とステータスに強い相関関係が見られたというのだ。これは子を持つ親としては黙って見ているわけにはいかないと思いますね。


 じゃぁ、小さな頃からどうやったら自制の心を持つことができるかってのが、市井のお母さん、お父さんの関心ごとになるんだろうけど、それらが懇切丁寧に書いてある。

 俺:「どっちの遺伝なんだろうなぁ・・」
 妻:「あなたの劣等遺伝子受け継いでいるんじゃない?」
 俺:「(ギク!)い、、いや育てる環境が悪いんだよ、、、」

 なんて、生まれ(遺伝子)か、育ち(環境)が自制の心を決めるのか?どっちなのだろうかと。


 そんな心配はご無用。実は僕らが持っている遺伝子が発現するには、発現するための環境が必要で、遺伝子と環境は相互に影響しあっているという。それほど単純なものじゃないそうです。考えてみれば人間とチンパンジーでさえ遺伝子の違いは数パーセント、人間同士とならもっと少ないだろう。遺伝子はその人固有のものを決めるものになったとしても、長い間生きていく上で決定的なモノにはならない。


 なら遺伝子が(ある程度)関係ないなら自制の心は伸ばす事ができるのだろうか?著者は訓練によって伸ばせると数々の調査、研究から言っています。希望が見えてきました。それは著者いわく、その人のホットシステムが起動するイフ、ゼンを見つけると言っています。

 (イフ)ホットシステムが起動
 (ゼン)こうする

 と言うのを繰り返し、例えば自分も小学校で言われた事がありましたが、怒りが出てきたと思ったら、10数える、深呼吸するなどです。当時は殆どできませんでしたし、そんなのするかよ(怒)でしたが、今思うと有効だったんですね・・あと最近するようになったのは「その場を離れる」です。それらが自動的に出来るまで練習、練習、練習だそうです。気の長い話ですね。何度も根気強く見守るしかないみたいです。


 実は、本書で語る通り、人の行動は一貫性はなく、あるのは、とある状況に起こす行動で、それのみに一貫性があるというのです。例えば家でお酒があると飲んでしまう(飲む欲求としてホットシステムが起動する)などです。著者はこれをイフ、ゼンパターンと言っています。


 とある人を一貫性があると判断するのはそのイフ、ゼンが無意識にでも分かっているからで、とある状況でした行動が別の場所で起こるという保証はないそうです。先の例で言えば、定時後、今日はお酒飲んで帰ろうか!と思っても、飲む欲求としてホットシステムが起動するかと言えば、しないんですよね、、(自分の事ですが)


 なので、先に書いたように、「その人のホットシステムが起動するイフを見つける。」「その代替行動をするよう教える」です。あとできたら報酬を与えるです。この辺は行動分析学そのものですね。


 また、本書でも触れられている通り、逆に待てない子と言うのはそれほど愚かなわけではなく、その子供は「今すぐ」得た方が得だという環境下で育っていたりするかもしれません。例えば仕事今やっているから後で遊ぶと言う約束を守ってくれない親とかに育てられたり、今取らないと他の子に取られてしまうと言った環境です。なので、親として出来るのは、子どもと日ごろ約束したら*必ず*守るという信頼関係なのだなと。


 子ども自分は「出来る!」と思う事が重要だと。意志の力です。いくらそういう訓練をしようとしても実は本人にやる気がなかったら効果は薄いんだと。なので、未来のこの日にXXをするから頑張って行こう!と言う心を醸成するのも大事なのかなと。これは衝撃的でした。こういった心理学の人は意志の力と言うのは言わないもんなのかなと思っていましたが。


 これらの研究は社会的にも取り入れられ、著書の例ではセサミストリートでも活用されていると言います。私見ましたねぇ高校生のときに、英語のリスニングにとひたすら見ていました。そのセサミですが、その中にクッキーモンスターと言う青いお化けがいます。このクッキーモンスターはその名のとおり、クッキーが大好きで、クッキーを貪り食うのが大好きです。まさにホットシステムで生きているという感じですね。


 そのクッキーモンスターが「クッキー通クラブ」に入るために、クッキーを食べるのを我慢するストーリーとして紹介されています。クッキーを食べたくなったとき、「ウェイティング・ゲーム・シスターズ」が現れて、そんなときどうするの?を歌いながら提示していきます。内容はまさに本書で沢山の子供たちがやってきたことで、たとえばクッキーは絵なんだとか、歌を歌って気を紛らわすとか、実はおいしくないんだとか言った方法です。


 こんなビデオを子供の頃に見せられたらどうでしょうか?日本の教育番組ではこういった取り組みってのは見たことが無いのですが(自分が見ていないだけかもしれませんが)子供たちはビデオによってクッキーモンスターをモデルに自制の方法を学ぶわけです。


 見ているときは笑ったりクッキーモンスターに同情したりするけど、いざそういった場面に自分が出くわしたらクッキーモンスターを思い出し、その行動を行えるのです。方法を知っていると知らないとでは天と地ほどの差があります。そしてその自制の成功は次の自制への自身へとつながります。


 著者が17章最後で言っているように、努力や我慢を盛り立てて持続させるような熱烈に達成を望む目標と人をふるい立たせてくれる手本と様々な支援を与える社会環境が大事だと言います。熱いですね、山元五十六を思い出します。アメリカは多種多様な人種で構成されている分、とあるグループに有効な政策が他のグループには有効じゃないなどの問題があると思いますが、それらをこういった一種の社会実験として成功、失敗を繰り返しているのが強いのかなと感じます。


 300ページ以上あり、読む分にはツイッターやネットをやる時間を自制する心が必要であったりと大変ですが、この本、認知行動療法、行動科学の実験などからいろいろと話が聞けて面白いです。もっと気になる実験などはあったのですが、なかなかまとまらない自分がいます。なにより、今の自分を見て未来が無いなぁなんて思っていても本書を読むと、人間変われるんだなぁ、と漠然と希望が見えてくるようなそんな感覚になります。自分の行動を変えたい、お子さんの自制心の無さをどうにかしたいという方、必読のような気がします。


 自分は行動分析学系の本を読んだりして、人間の行動を決めるキーとなるものは、環境なんだなぁ意思の力は関係ないんだなと思っていたが、それら環境変えれば変われるけど、それよりまず「お前の意思が重要だ」と言うこと。本書いわく「我思う、故に我変われり」だと。




Play the Waiting Game with Guy Smiley and Cookie Monster! Can cookie wait it out to win a very delicious prize? Good things come to those who wait.
う、、、なんだか気持ちは分かるが、正確に訳せない・・・(老化現象)



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