江戸っ子はなぜ宵越しの銭を持たないのか? 落語でひもとくニッポンのしきたり (小学館101新書)
- 作者: 田中優子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/06/01
- メディア: 単行本
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江戸っ子って言うと宵越しの金は持たない。昔から言われているけど何で?そんな素朴な疑問を引っ掛けに江戸文化を紹介する本。自分が知っているのは江戸は火事が華と言われるほど火事が多い。そこで火事が起きたあとの建築はどこでも行われており、まず仕事には困らないという背景があり貯金をするって文化が生まれなかったということ。また、一般ピーポーが住む長屋なんて一間しかないところで金を隠す場所なんて何処にもない。ためても無駄。さてそれは本当か?
本の裏表紙には「気鋭の江戸学者が世に問う、初めての本格的「落語論」」と書いてありますが、この本は論文でもなんでもありません。落語の話題を中心、きっかけとして江戸の人情、文化などを紹介し、著者の独自の視点が描かれる本で特に「xx論」とか小難しい感じではないです。どちらかと言うとエッセーですね。文中の著者視点からの現代の対比などが面白い。第1章が本のタイトルに答えてくれるが宵越しの金を持たないというキーワードから、江戸っ子の気性、人生観、はてはイソップ童話、江戸社会の懐の大きさ、そして現代の懐の小ささと話題は多岐にわたる。まるで浦沢のマンガを読んでいるように大風呂敷が展開する。非常に面白い。
自分自身としては例えばP68で火事が多いために商人達は自分の屋敷のほかに遠くに蔵屋敷、木材置き場などを作り、家事になってもすぐに再建可能にするとか、正直ITのマスター、スレーブの考え方みたいだねとか、P68あたりの遊廓のシキタリとか、P84あたりなんかは誰がお金を稼いでくるかって話。僕らは「男が稼いで女が家を守る」ってのが美徳って言われた世代で、カミサンを働かせるのもなんか気が引けているんだけど、実は男が金を稼いで女が家を守るって言うジョーシキはほんの一時のものなんだなってなことが分かる。
また、遊郭って言うと、男どもが通う歌舞伎町のようなものってイメージがあるけど、旅人、女子供なども楽しくすごすテーマパークのようなものだったらしい。面白い。もうね、著者の筆で江戸の町人文化の生き生きとした表情が語られてるね。落語に限定せずに江戸文化一般を知りたいならお勧めだよ。
著者の別の本 「カムイ伝講義」なんかも読んでみたいと思った。
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