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おっさんの日記

日本史リブレット、労働力動員と強制労働

 

労働力動員と強制連行 (日本史リブレット)

労働力動員と強制連行 (日本史リブレット)

  • 作者:西成田 豊
  • 発売日: 2009/08/01
  • メディア: 単行本
 

 いつもの日本史リブレットシリーズ。薄くて読みやすくて気軽に読むには最適ですね。終戦日になり戦時の話題がTVなどで特集が組まれていた時にタイトルに惹かれて購入。

 

内容は4部構成で、日本が経験した総力戦に対する労働力の確保と言う面を書いていきます。総力戦というのは著書に冒頭によると

 

国家の総力(軍事力・経済力・精神力)をあげた戦争のことである。すなわち、国家が軍事力増強のために、軍需産業を中心に経済活動を統制する一方、国民の精神動員・思想統制を実施した戦争

 

とのことで、軍需産業へどのように人が動員されていったかと言うのを数字や当時の記録から書いています。1部は日本人、2部は朝鮮人、3部は中国人と分けて数字と当時の事実が語られます。4部は終戦に向けての総括。

 

日本人については、はじめ小学校卒業者が陸海軍の工場や各軍需産業への就職斡旋された。中学校卒業者ははじめは上級学校への進学により技術者など高いレベルの人材を確保するため対象外。この事からこの頃はまだ戦争は数年または10年単位で続き、人を養成すると言う形だったのだろう。しかし1943年にはこの中学校卒業者も小学校卒業者と同じく工場などへの就職斡旋と言う形で現れる。労働力確保の数字からも情勢の悪さというのは1943年ぐらいには見えてきたのだろう。このほか、農民・農村民、中小商工業者、女性、と分けて動員の様子がみて取れる。

 

朝鮮人に関しては日本の軍需産業の各会社から動員数をリクエストされ、朝鮮半島各地点で募集が行われた模様である。賃金については日本人と差別がないようにすると決められていたようだ。ただし、後で書かれるように半強制的な貯金であったりと本人の手に渡るのは少なく、と言う現状だったらしい。次の中国人についてもだが、劣悪な労働環境の中、逃亡と言う形となって現れる。どうやら国内に逃亡を協力する組織があったとのこと。これが他国で日本人が劣悪な環境に置かれていたらどうだろう?逃亡を助ける組織と言うのは組まれたのだろうか?ちょっときになる。また逃亡とは別の方法が労働争議と言う形で現れたようだ。これも日本人ならどうだっただろう?と言う疑問はある。

 

中国人に関しては朝鮮人が「同化」対策が行われた一方、中国人は敵国人として徹底して「異化」の対象とされた。それも強制労働の内容となって現れる。日本人、朝鮮人との接触を禁止し、休憩時間なし、休日なし、仕事が終わらないと休めない。朝鮮人もだが、厳罰で持って対応された。

 

4章で言われるように、1944年10月〜1945年3月の時点ですでに労働力の供給源としての*人*がいないので国民動員計画の策定中止となって現れ、閣議決定されたのが国土の要塞化、疎開の徹底、特攻隊など。負け戦に向けての準備になっていった。

 

確か大戦の国内にいる戦争で亡くなった方は90万人ほどで殆どの死亡者は終戦の年に集中していると記憶している。3月の時点で白旗をあげていれば兵士も含めていかほどの人の命がなくならずに済んだんだろうね。ただ、負ければどうなるかわからないと言う心境の中では死なばもろとも、なのだろうけど。今の戦後の結果から当時の人を語ってはいけない。