arcanum_jp’s blog

おっさんの日記

「中世ヨーロッパの生活」田舎生活の理想郷だねこれ

中世ヨーロッパの生活 (文庫クセジュ (590))

中世ヨーロッパの生活 (文庫クセジュ (590))


近くの蔦屋に行くたびに気になっていた本。中世か・・・中世と言うとアレクサンドル・デュマが三銃士を発表したのは1844年、この本で出てくる話はあとがきにある通り13世紀〜14世紀あたりの話でそれよりも400年ほど前である。何を言いたいかって言うと、自分がこの本を取った時のイメージする中世からもっと前の事。今から見れば宗教に厳密な閉塞感があった世界なのだろうか・・・魔女裁判・・・おお怖い・・・なんか頭の中で際限なく想像しはじめる自分・・・

初版は1975年12月です。自分がまだ4歳で保育園にも通っていない時ですね、、当時のうっすらとした記憶はもう本当かどうか、あったのかすら分からない、確かめようも無い、そういう時代に出た本です。著者のジュヌヴィエーヴ・ドークールは不詳でありボルドー市図書館主席司書であったとも記載されている。ネットで人物名で調べても出てこない。原著は訳版より30年以上前のc年に刊行とある。昭和19年と言うと現実味が少しは増してくる。日本はで戦争中ですね。そんなさ中、出版された本です。

内容については、本の紹介にある通りです。フランスを中心にした中世の生活を書いています。

おもに十三〜十四世紀のフランスを中心とするヨーロッパ中世期の人びとの生活を、衣服、食事、住居といった生活の具体的な側面に光をあてて描き、彼らがその誕生から死にいたるあいだ、物質的な貧しさと宗教的な安らぎのうちにどのような生涯を送ったかを浮き彫りにする。

まず、中世と言う言葉について、初めに定義が書かれていますが、西暦500〜1500年頃で先ほど書いたアレクサンドル・デュマが生きていたあたりは既に中世ではないのですね・・・ちなみに三銃士の時代設定は1600年代なので中世が終わったあたりとなります。と言う事は時代背景が微妙ながら三銃士のダルタニャンなどはこの本で描かれていた生活を行っていた事になります。一つ利口になりました。本書の内容はいくつかカテゴリに分けられており、1章は中世の生活における必要なモノについて、そして、2章は日々生活する上での行事など、3章は生まれてから死ぬまでの生活一般を書いています。


本を読むにあたり、何の知識もなく読むと、出てくる言葉やモノの名前を知らず、困惑します。興味本位で買った本なので当たり前ですが・・・本を読みながら言葉をネットを平行して調べる・・・のような作業が必要です。例えば「ブレ」これは男性の服らしいのですが、言葉からはどんな衣服なのかサッパリ想像できません。ネットで調べて昔のズボンの事なんだなと分かる。こんな感じで読むのがちょっと苦労しました。本を読みながら疑問に思った語句を後から調べる、またはタブレット片手に読みながら調べる事が必要です。でもネット片手に読んで行けば知る事はできると思えばいい時代です。


本書を読んで思うのは、あとがきにあったこの文の通り、

 幸せが、生活の快適さに拠るのであれば、中世に生きた私たちの祖先は、現代人よりも不幸せであったとしんじられよう。だが、もし幸せが、生と対峙する態度に拠るのであれば、超俗世的な信念をもっていたその時代の人びとは、現代人以上に、幸福感、控え目にみえても内的な安らぎと心の安定に接していたと考えることができるのである。

この文章は本当に最後に書かれているのであるが、本を読んできて色々と感じながらこの文章を読んだ時に、あぁ、ほんとその通りだなと思わされる。中世の生活は今の生活と異なり、物質的に足りる事はない。だけれども、生活が心身を強くし、心は宗教(主に修道院)が主導し、豊かにしていたと言える。この本ではその修道院が示す行動規範により人々は理想郷の人達のように穏やかに住んでいたと感じる事ができる。


読むと感じるのは「貧しい人」が生きる権利を持っていた、周囲に生かされていた事だ。刈り取りの後の落穂ひろい、藁の刈り取り、それらを初めに行う事ができ、医者にかかった時も宗教的な理由によりお金を免除された。死に直面すればそれらを収容する施設が金持ちなどの寄付から運営されており、死んだ時でさえそれまで高利貸しから借りていた借金はチャラになり、持っていた財産自体は相続人に引き継がれた。高貴な人達は宗教的な理由により、貧しい人、病んだ人を助ける事が高貴な事だとされた逸話が残っている。

コミュニティの中で住むってことは貧困に喘いでいなくともいつなんどきその立場になるか分からないのでそういう規範は守られたって事だろうか。一つ言えるのは修道院が人間の人生については来世により救われるというのが広められており、それらが人々の希望となり、規範を守る原動力になっていたのだろう。現代より他人に優しい世界だったと感じる。


中でも面白いなぁと感じたのはギルドの存在である。ギルドと言うと職人集団、日本で言う工芸を作っている人達で弟子には技は盗んで覚えろ勝手に育て!去る者追わず、と言うイメージが自分はあったけど、本書によるとギルド内で親方は、弟子を(面倒が見れる限界を考慮し)一人か二人持つ事ができ、2度までは逃げても親方が探す責任を負っていたし、探せなかったとしても戻ってくる期間(1年とか)はほかの弟子を取れない。そうして親方が子に対して優しさと良い待遇をするように仕向けられたというのだ。なんと日本人から見れば理想郷か!!(笑)ギルドは職種ごとの集団を表すほかに人を育てるという役目も負っていたのですね。


色々と今とは異なる生活習慣など知る事ができて面白い本でした。(章だてが長すぎてどこで一旦やめようか・・・となりましたがww)