
死者の結婚 祖先崇拝とシャーマニズム (北大文学研究科ライブラリ 3)
- 作者: 櫻井義秀
- 出版社/メーカー: 北海道大学出版会
- 発売日: 2010/04/13
- メディア: 単行本
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以前、FBの友達(という名の知り合いとも呼べない人)が読んでいたのがウォールに上がっていたのを題名が面白そうだと購入したもの。一度読んでいたんだけど、先日いらない本を処分するにあたり整理していたところそう言えば面白かったなと再度読み直してみた。
題名からスピリチュアルなものか?とかオカルト?小説なのか?とか想像してしまいますが内容は世界中にある死者が結婚する習俗を扱ったもので、中心になるのは山形のとある地域(山寺)で行われているムカサリ絵馬奉納というものを題材にした社会学の研究が中心です。
この死者の結婚ってモチーフは藤子Fの短編でも「山寺グラフィティ」でもそのまんま使われていて面白いなと思った記憶があります。それ故に、FBのウォールに上がってきた時に興味を持ったのですが、それ以後山寺に登るたびにこの死者の結婚って風習について思い出してしまい、仏閣を見る際にそういう視線で見てしまう事になったのですが。
死者の結婚自身は、結婚をせずに死んでしまった家族を死んでからでも結婚をさせる事によって死者の色々な権利を回復していくというもの。
死者の権利回復とは?なんで死んでるのに結婚なの?って疑問が浮かぶけど、日本人の生まれてからのライフサイクルとして、生まれてから結婚して家、家庭を持ち死んでいく、年忌法要が終わると祖先となるというもの。
そのなかで結婚すら出来ない、子孫を残さずに死ぬという事はその先にある祖先になる事ができないという考えがベースにあり、生者の事故や家族の病気、不幸など先ほどのあるべき人生、従来からの規範からの逸脱が故人からの知らせと解釈され、山形の例ではムサカリ絵馬奉納として行われる。
しかしながら死者の権利回復は本書の中盤にある奉納した人へのアンケート、聞き取りでわかるように、死者の権利回復をしつつ自分の気持ちの整理であったりがそのムカサリ絵馬奉納によって行われるというものでしょう。これは葬儀が死者のみならず残された家族などのために行われている事と共通しているのでしょう。
まぁ聞き取りの内容を読むに、奉納をして事象(悪い事)が収まったなどと言った内容を見ればこう言った部分はオカルトと言われても仕方がないですが、それ自身が問題をムカサリ絵馬奉納を機に心の中で整理したという事なんだろう。
こういうのを読んで思うのはオカルトと切り捨てても別に個人の自由だが事実としてこういう習俗があったという事。以前、イザベラ・バードの日本奥地紀行を読んだ際も思った事だが、正直読んでもこんな風俗知らないぞ?これはどんなものだろう?と文章で読めても、どんな物なのだろうと想像すら出来ないものがあった。でも著者の目から見た風俗はその時はあったわけで、この人が残していなかったら日本の以前あった風俗というものは消えて歴史の中からも綺麗サッパリなくなっていたんだろうということ。
どんな風俗、習慣であっても本に残るということが大事であろう。最近文系はイランとかいう風潮が強いけど、こういう私たちの現在に対して過去はどうだったのか?ってのがわからなくなるわけで歴史にも学べないという形になるんだよなと。
面白いのは山形の例にしても沖縄のユタにしてもその言ってる事が一般的に、心情的に、は自然な事や、何十年も前の法律や狭いその地域での人々の規範(家父長制など)をベースとしていること。何も神様が憑いたから特別な事を言うってわけではないところで、こういうのがこの死者の結婚の習俗のように一般的に「オカルト」と感じられるものであっても丹念に調べていけば過去のある時点の習慣、法律を元にしているというもの。面白い。

- 作者: イザベラバード,Isabella L. Bird,高梨健吉
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2000/02/15
- メディア: 文庫
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